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プレステージ

メメントのことを書いたので、ついでに同じ監督のプレステージの話でも
だいぶ前に書いたのを引っ張り出してきたので言葉遣いおかしいけど気にしない方向で 笑
ネタバレな上にがっつり長いので時間のある方だけどうぞ


ネットの評価を見ると想像以上に伏線に気づかず終わっている人が多かったので、自分で疑問だった部分をネットの文献を参考にまとめたものを、ネタバレをしながら解説していきたいと思います

「観客は実は何も観ていない・・・騙されたいのだ」

映画冒頭の言葉ですが、2回目を見るまで自分も色々騙されたままでした 笑

※ここから激しくネタバレを含みます※



まず、二人のボーデンは双子の兄弟だったのか

これはネットでも双子説とコピー説の二つの説がありますが、双子であると考えた方がしっくりきます。

コピー説の根拠としてあげられるのはアンジャーにテスラの事を教えたのがボーデンだったこと、人生を犠牲にしてまで人を欺く中国人のマジックに感銘を受けた後にファロンが出てきたこと、主にこの二つのようです。しかし、以下の理由から個人的には双子説を支持します。

一つの根拠としてクリスチャン・ベイルの演技が最初の方から揺れているということ。注意深く見ていくとマジックのネタに固執して熱くなる傲慢で挑発的なボーデンと、彼より穏和なボーデンとの二人がいるということが分かります。彼らは日常生活でもファロンとボーデンの役を入れ替えて生活していました。さらに言えば、前者がオリヴィアを愛したフレデリック・ボーデンであり(オリヴィアにフレディと呼ばれて焦っていたのはそのため)、サラに出会い、愛して子をなした方が穏和な方のアルフレッド・ボーデンであると原作では明かされています。(映画の中ではアルフレッド・ボーデンの名前を使っているので混乱しますが・・・)

マジックはネタこそが全てであると考えるフレデリックは、縄抜けのマジックでの難易度を上げるべくロープを二重結びにしたことでアンジャーの恋人を殺してしまいますが、葬式に来てアンジャーに問い詰められたボーデンはアルフレッドだったためロープの結び方を覚えていないと答えてしまい、結果アンジャーの恨みを買うこととなりました。同様に銃弾掴みのマジックによってアンジャーの報復の際、もう一度「覚えていない」と答えて最初に指を失ったのもアルフレッドと考えられます。サラにファロンを紹介し、銃弾掴みのネタを嬉々として教えていたのはフレデリック。サラを自殺に追いやった「愛していない」という発言もフレデリック(彼からすればアルフレッドの妻であるサラを愛せないのは当然)。アンジャーの最初の瞬間移動のタネに気付き、マットをずらして足を折り、代わりに自分が出てスポンサーを宙づりにしたのも恐らくフレデリックですね。

よくよく考えていけばこの二つの人格がコピーであるとは考えにくく、もしボーデンがいわゆる二重人格の障害持ちでコピーによって分離したとしても(ネットでたまにあった議論)、次の根拠が決定的です。

それは、テスラのキーワードを教え、装置の作成依頼をしたことまであるボーデンが(アンジャーのセリフ「ボーデンにも作ったように、私にも装置を作ってくれ」というのから分かる)、アンジャーの第二の瞬間移動の仕掛けが「分からない」といったことです。その時タネに固執して「落とし床しか分からない!」と憤っていたのはフレデリック、ファロンとして「我々の負けだ、もう関わらない方がいい」とたしなめていたのがアルフレッドだと思われます。

もしこの二人がテスラの装置によって作り出されたコピーだとしたら、テスラに会いに行き、装置に入り、稲妻に打たれるところまでの記憶は共有しているはずです。そこで実験が成功し、シルクハットのように屋外にコピーが発生していたとしても、二人目の自分を見れば自身に何が起こったのかは容易に理解できたのではないでしょうか(コトの重大さは別にして)。(ここまではコピーでないことの理由として残しておきます)従って、アルフレッドはテスラの装置に興味を持ち、実際に会って装置を試してみてコピーの事実には気がついたものの、フレデリックにはそれを伝えなかったというのが真相かと思われます。テスラ装置の効果を知っていたアルフレッドは、毎晩の公演でアンジャーのやっていることのおぞましさに気付いてしまったために、フレデリックに「これ以上深入りするのは止そう」と申告していると考えるのが一番しっくりくると思うのですがどうでしょう。(実はここは会いに行ったボーデンがフレデリックで、死刑に至るまで全て逆だったとしても一応成り立つのですが、二人の性格的にしっくりくる方を選びました)

打ち消し線の部分について訂正のコメントを頂きました。実に分かりやすく解説してくださっているので是非そちらを読んでみて下さい。

さらに投獄されていたボーデンは結局トリックを解明出来ずに「ネタ」を見てしまったフレデリックであることを考えると、獄中での看守相手の行動や、アンジャーの日記中で知らなかったテスラの実験の効果について驚いていたこと等もしっくりくるかと思います。

以上が、自分が双子説を支持する理由です。(話の作り的にはコピー説の方が面白いですけどね 笑




次に、あのマジックのオチはなんなのか

最後のマジックのSFチックなオチに、えええええとなった人も多いと思います。やっぱり知らない方がよかった?そう思うならこの映画の術中にはまってしまっていますね(笑)。本来マジックというのはそういうものである、と劇中でも述べられています。が、これはテスラという人物を語ることである程度納得して頂けるかと思います。

ニコラ・テスラは交流電流を研究していた実在の人物です。直流派のエジソンと対立し、高圧電流による放電現象などを観測できるテスラ・コイルなどで知られていますが、晩年は離れた場所にエネルギー・情報を送るという(いわゆる無線技術の)研究に没頭していたそうです。

この映画では、その研究に最初に目を付け、人間そのものを離れた場所に転送する「人間瞬間移動」のネタとして利用できないかと考えたのがアルフレッド・ボーデンでした。彼はテスラをたずね、装置を試しますが、そこで起こったことは「転送」というテスラの想定を超えた「複製」という結果でした(家の外に転がるシルクハットに気付いていなかった事から、テスラは自分がなんでも複製機を作ってしまったことに気付いていなかった)。

マジシャンが見せる3つの段階、プレッジ、ターン、プレステージ。3つ目のプレステージでの肝は「マジシャンが元に戻す」ということでした。消えた鳩が再び飛びたち、消えたシルクハットが再び出現し、切り刻まれた美しい女性が再び姿を現してお辞儀をしてみせる。アルフレッドはテスラの研究をマジックとして利用することは、鳩を殺す必要のあるマジックと同様に非情になる必要があると気付いてしまったのでしょう。それを喜んで非情になってしまうであろうフレデリックには、実験の結果を打ち明けられなかったのだと思います。

(ついでに言えばアンジャーは自分のコピーと生きていくという選択もあったかとは思いますが、中国人のマジックを見に行ったときに「マジックのために人生を犠牲にする、それでこそマジックだ」と語るボーデンに「そんなバカな」という返しをしています。さらに新しいマジックで鳩を殺すことを嫌がり、袖にカゴが特殊な収まる装置に喜び、師匠にはいつか非情にならなくてはならない時がくるとたしなめられていました。ですので自分のコピーと共に人生を犠牲にして生きるという発想はもともと無く、コピーを殺し続けるという思考に流れていったのだと思います。)

鳩のマジックと言えば、アンジャーの瞬間移動マジックの隠喩として伏線でした。さらに落とし床は、ボーデンの死刑台の床とリンクしたメタファーでしたね。その伏線通りにアンジャーは毎晩自分を複製しては恋人を失った方法で自殺(処刑)し、それを繰り返すことで今生きている自分がオリジナルなのかコピーなのか、毎晩自殺している自分はコピーなのかオリジナルなのかということに悩まされることになります。

この「自分が正しいのか」というのはノーラン監督の作品によく出てくるテーマで、「メメント」では人の記憶がいかに曖昧なものかを示し、「インセプション」では自分の考えたことでさえ他人の埋め込みによるものかと疑い、「ダークナイト」ではヒーローの正義と守るべき住人は正しいのかということをジョーカーを通じて示しています。したがってこの命題を登場させるためには、このマジックのオチがあのトリックというのも必然だった、というのが自分の考えです(この映画だけ見ている人にはちょっとどうでもいい話ですが笑)。




さて、長々と語りましたがいかがだったでしょうか。

この映画は見れば見るほど新たな発見があって非常に面白いと思います。個人的に最後のシーンはマジックのオチではなく、撃たれたアンジャーとボーデンの二人のやり取りにこそ、「二人」の生き様、映画としてのオチが含まれてると思いますので、是非注目してみてください。

では今回はこの辺で、えぬまるでしたノシ
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1148:

ボーデンは装置を試してはいません。というか、彼がテスラのことをアンジャーに教えたとき、まだ装置は存在していません。テスラのことを教えたのは、アンジャーを遠いアメリカまで追い払うためです。(現に
2年経ってから帰ってくることになります)
その2年の間にテスラはアンジャーのお金を使って、装置を開発したのです。(テスラは資金が必要だったので、「僕の仲間が一度装置を作ってもらったときいて来た」というアンジャーの言葉にのります。が、ボーデンの日記を読んでだまされたとわかったアンジャーが「嘘ついたな!」と言ったとき、テスラの助手は「作った、とは言ってない」といいます。

テスラは最初、転送装置が失敗だと思いましたが、アンジャーが猫と帽子を帰りに見つけたため、複製と転送が同時になされることを知り、再開発しようとするのですが、エジソンとの確執や作ってしまったもののおぞましさにコロラドから夜逃げします。アンジャーには装置を残しますが、「壊せ」というメッセージ付きですし、研究所も焼き払っています。つまり、二度とこのようなものを作らせないためです。仮にボーデンが先だったとしても、テスラに二度目はなかったと思われます。さらにはボーデン(兄弟)がアンジャーの妻を死なせてしまった時代は彼(ら)はただのステージハンドであり、ファロンをやとった時代もお金にはずっと苦労しており、クローンの機械に投資するような大金があったとは思えません。よってテスラには開発の依頼すらしていないでしょう。最後にアンジャーを撃ったところでもボーデンは「おまえは無駄に世界を半周して大金をつぎこんだだけだ」と言っています。

サラの甥っ子が鳥が死んでいるのを見破ったときに
「where's his brother?」とボーデンに聞いているのも伏線になっています。

2012.08.12 16:23 Ken #qTlQTaRY URL[EDIT]
1149:

>Kenさん
コメント頂きありがとうございます
拝読させていただきましたが、確かにその通りかと思います。考え抜いたつもりだったのですが、まだまだ読みが足りませんでしたね(汗
本文からコメントの方へ誘導するよう修正させていただきました。素晴らしい映画なので出来るだけ多くの人に正しく理解してもらいたいですね!

2012.08.15 17:33 えぬまる #- URL[EDIT]

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